正直に告白すると、私は大のゴキブリ嫌いです。あの黒光りする姿を見るだけで、全身の力が抜けてしまいます。だから、ドラッグストアで「ゴキブリがいなくなるスプレー」という、まるで魔法のような名前の商品を見つけた時、迷わず手に取りました。これで忌まわしい遭遇が減るなら、安いものです。期待に胸を膨らませ、家に帰って早速使ってみました。説明書を読み、ゴキブリが出没しそうなキッチン周り、冷蔵庫の裏、ゴミ箱の周り、そして念のため玄関や窓のサッシにもシューっとスプレー。薬剤の匂いは少し気になりましたが、「これでいなくなるなら!」と我慢しました。使い始めて最初の数日は、確かに効果があるように感じました。いつもなら夜中にキッチンでカサコソという音を聞くことがあったのですが、それがピタッと止んだのです。「すごい!本当にいなくなった!」と、私はすっかり安心しきっていました。スプレーの効果は約1ヶ月続くと書いてあったので、しばらくは大丈夫だろうと油断していたのです。しかし、安心は長くは続きませんでした。スプレーしてから3週間ほど経ったある夜、キッチンで水を飲もうとした瞬間、視界の端を黒い影が横切ったのです。一瞬、時が止まりました。まさか…?恐る恐る目を向けると、そこには紛れもない、ヤツがいたのです。しかも、以前より心なしか大きいような気さえします。「いなくなるんじゃなかったの!?」心の中で叫びました。スプレーの効果が切れてきたのか、それとも薬剤に耐性のある個体だったのか、あるいはスプレーしていない隙間から侵入してきたのか…原因は分かりません。結局、そのゴキブリは別の殺虫スプレーで退治しましたが、私の「いなくなるスプレー」への信頼は少し揺らぎました。この経験から学んだのは、スプレーは万能ではないということ。効果はあるけれど、持続期間には限りがあるし、全てのゴキブリにいなくなってもらうのは難しい。やはり、スプレーだけに頼るのではなく、こまめな掃除やゴミ処理、侵入経路対策など、地道な努力も併せて行うことが大切なんだと痛感しました。期待しすぎは禁物ですが、使い方次第では有効なツールだと思います。