人間の五感は、時に目に見えない危険を察知するための優れたセンサーとなります。ゴキブリがいるかどうかを確かめる際も、視覚だけでなく、嗅覚が重要な役割を果たすことがあります。部屋の中で、原因不明の不快な匂いが続く場合、それはゴキブリが多数潜んでいるサインかもしれません。ゴキブリは、一匹だけではほとんど匂いを発しません。しかし、数が増えてくると、彼らが放出する「集合フェロモン」によって、独特の匂いが空間に漂い始めるのです。このフェロモンは、仲間同士で居心地の良い場所を教え合い、集まるために使われる化学物質です。つまり、この特有の匂いがするということは、彼らがその場所をコロニー、つまり巣として定着している可能性が高いことを示唆しています。では、その匂いとは一体どのようなものでしょうか。多くの人が表現するのは、油が古くなったような、少しカビ臭くもある独特の不快臭です。人によっては、少し甘ったるさを感じることもあると言います。この匂いは、特に湿気が多く、空気がこもりがちな場所で強く感じられます。例えば、キッチンのシンク下の収納棚を開けた瞬間や、しばらく開けていなかった押し入れ、あるいは冷蔵庫の裏側などから、もわっとした異臭を感じたら要注意です。換気をしているにもかかわらず、部屋のどこかから常にこの種の匂いが漂ってくる場合、状況はかなり進行していると考えられます。ゴキブリの糞や死骸、脱皮殻なども匂いの原因となり、これらがホコリと混じり合うことで、さらに不快な臭気を放ちます。普段の生活臭とは明らかに違う、何か生命の気配を感じさせるような生臭さや油臭さに気づいたら、それは気のせいだと片付けずに、匂いの発生源を特定しようと試みることが重要です。あなたの鼻が、目に見えない敵の存在を教えてくれているのかもしれないのです。
部屋に漂う不快な匂いで存在を察知する